軽くたたく程度のことでも、非常に緊張しやすく感受性の強い犬にとっては、ずっと頑健な同類がうける激しい打撃よりも影響するところが大きい。
肉体的には、健康な犬は、その鼻づらを打つ場合は別として、きわめて鈍感な生き物であり、素手で痛い目にあわせることはほとんど不可能である。
私のシェパードは肉体的には非常に頑丈な犬で、遊んでいるときに私は、しばしば体じゅう青黒いあざができるほどの目にあわされた。
そんな場合には、私は雌犬に拳で打撃を加えることかできたし、腕にしがみ突いたりしたら荒っぽく大地に投げとばすのだった。
ところが雌犬はそうした手荒な扱いをちょっとしたスポーツだと考えており、さらに荒っぽい報復をお返ししてくるのであった。
その反面、私が本当に真面目な気持をこめてほんのちょっとたたいても、雌犬は悲鳴をあげ、不幸そうなしぐさで尻込みするのだった。
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スパニエルとかセッターなどの品種の場合にしばしばそうであるように、精神的にも肉体的にも繊細な犬については、肉体的な折檻を加えるうえでもっと多大の配慮が払われねばならない。
さもないと、犬はおびえやすくなり、自信平生の喜びを失くして、ついには永久に手を怖がるようにさえなってしまう。
シェパードとチャウチャウ犬の混血種をつくるうえで得た私の経験によると、とくにシェパードの血が勝っていたものには、非常に「軟弱」で感じやすいものから完全に鈍感なものにいたるまで、気質の面での両極端がまったく不規則に認められるのである。
異例なほどに「タフ」な犬だったのと、または正反対であった。
あるとき、この二匹がまっすぐな狭い道を再三それてしまうことがあったそのとき雄犬らは一匹のマルチーズをほとんど追いつめていたのだが、その場の通りすがりの人は見るからに不公平な私の態度に憤慨の色を浮かべたものである。
というのは、私はいつも母のほうはむちで打ち、娘のほうはかるく平手でたたいて怒りの言葉を与えるだけだったからである。
それでも両方の犬が等しい罰をうけたことになったのである。
どんなかたちでの犬の罰も、それかあたえる苦痛に頼るものは、罰をあたえる者の力を示すものよりも効果的ではない。
犬がこの力の示すところを本当に理解することが、罰をもっとも有効なものとする。
犬もサルと同じように、順位をきめる争いでお互いになぐりあいなんかせず、噛みつくものだからである。
従って打つことは、本当は、折檻の形式として適切でも理解されやすいものでもない。

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私の友人は、傷をつけない程度に腕か肩を噛んでやると、サルは、もっともひどく打った場合と比べ物にならないほど強い反応を示すことを発見した。
しかし、もちろんサルに噛みつくのは誰の趣味にもかなうというものではない。
だが犬の場合には、群れのリーダーの罰のあたえ方を真似ることができるか、それは人間の個人的な感情にそれ程答えないやり方である。
すなわち、犬を首を持って持ち上げ、ゆさぶるのである。
これは犬を罰するうえで私が知っているもっとも厳しいやり方であり、犯罪者に強い反応を起こさせなかったことは一度もない。
現実には、シェパードほどの大きさの犬を持ち上げてゆさぶることのできるオオカミのリーダーは、巨大な、超オオカミということになるが、折檻の最中には、犬は、飼い主をまさにそのようなものと思いこんでいるのである。
この罰のやり方はわれわれにはステッキやむちでたたくよりも厳しくはないように思えるが、雄犬らを完全におびえさせてしまいたくはないのならば、たとえ成獣の犬にたいしてもこの罰を与えることには十分な注意を払わなければならないほどのものである。

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